森林環境税の使いみち by 無樹(むじゅ)の町

BLOG

こんにちは森林の風事務局です。三重県南部に位置する度会町では、町面積のおよそ85%にあたる約1万1400ヘクタールを森林が占めています。それにも関わらず、森林環境税の約9割が具体的な用途に活用されることなく「基金」として積み立てられていたという報告がありました。この背景には、マンパワーの不足や国からの具体的な活用方法が提示されていなかったため、税の有効な使い道が明確ではなかったことがあるそうです。

現在は未整備の森林や、整備後10年以上経過した森林の境界を明確にする意向調査を実施し、必要に応じて路網を整備しながら森林整備が進められています。豊富な森林資源を直接的に活用する可能性も大いにありますね。しかし一方で、森林が豊富ではない市町村の場合はどのような取り組みが可能なのでしょうか。その地域資源を活かした独自の方法が求められるかもしれませんね。

三重県北部に位置する川越町には森林がありません。それにもかかわらず、住民から「みえ森と緑の県民税」や「森林環境税」を徴収し、これらの税金は県内の間伐材を活用した机や椅子の購入や、公共施設の木造化改修事業などに使用されています。

本来、この税は目的税であり、森林整備や人材育成に直接使用されるべきです。しかし、対象となる森林が存在しないため、直接的な活用が難しいのが現状です。このため、将来のために人材育成を目的とした森林環境教育に力を入れるという考えもありますが、川越町に森林がない以上、その効果が直接的に町の利益につながるかどうかは不透明です。また、森林がない故に専門の担当職員がおらず具体的な使いみちを決められないままになっている現状もあると思います。

税の徴収を完全に止めるという選択肢もありますが、実現は困難です。代わりに、行楽やリハビリテーションなどの保健・レクリエーション、景観や学習といった文化的側面を強化する方向が現実的だと思います。そのためには、川越町全住民が森林レクリエーションを積極的に楽しむべきです。森林浴や紅葉狩り、登山、バードウォッチングなど、多彩なアクティビティを楽しむ機会を増やすことが最善と考えられます。また、整備活動(植樹、歩道作り、草刈など)を体験し、学ぶことも有意義なことでしょう。

川越町には全住民を対象としたコミュニティクラブが存在します。この組織を活用して、幅広い年齢層の住民が森林関連のイベントを満喫できるような取り組みを行うべきです。子どもだけでなく、大人も含めた全員が楽しむことで、地域全体で森林への理解を深め、関心を高めることができるはずです。

要するに、徴収された税金は、基金として蓄えるだけではなく、町民全体が森林に関するサービスを直接享受できるような仕組みを構築するべきだと考えます。地域に森林の有無にかかわらず税が徴収されている以上、地域住民が森林関連のサービスを受けることは、当然の権利として認識されるべきです。例えるならば、税金1000円を支払うことで森林イベントのチケットを購入したというイメージが近いかもしれません。

同じく森林がない自治体の例として、愛知県安城市があります。安城市は矢作川を通じた地域間のつながりに注目し、長野県根羽村との“上下流”連携を長年続けています。森林環境譲与税を活用し、親子向けの交流事業「あつまれ ねばの森」を実施するなど、木材に親しみを持てる活動を展開しました。このイベントでは、子どもたちが根羽村産の木材を使って箱や表札、スプーンなどを制作し、好評を博しました。こうした取り組みは、森林が身近でない住民に木材文化を広め、地域間のつながりを強化する良い例といえるでしょう。このように、川越町でも税金を有効に活用するために公共施設の木造化のみならず、森林に関するイベントやサービスを通じて町民全体が恩恵を受けられる仕組みを積極的に導入するべきだと考えます。

■森林環境税の基本的な仕組み
森林環境税は、個人住民税と合わせて自治体により徴収されています。
対象となる納税者は、国内に住所のある納税義務者。納税額は、年額1,000円。
都道府県・市町村は、受け取った森林環境譲与税を森林整備に関する費用に充てなければなりません。
また、インターネットなどを利用して使い道を公表する必要があります。
使い道としては、
①間伐や林業道の開設といった森林整備
②森林整備を促進する人材育成や担い手の確保
③森林整備を促す木材利用の促進や普及啓発

■三重県では、平成26年4月1日から「みえ森と緑の県民税」を導入しています。
納めていただいた税金は、森林づくりのほか、森林環境教育や、公共建物等の木造・木質化などに役立てています。
金額は、現行の県民税均等割に上乗せする形で、1年間に個人では1,000円、法人では県民税均等割額の10%相当額(2,000円〜80,000円)となります。
基本方針1「災害に強い森林づくり」では、
2つの対策「土砂や流木による被害を出さない森林づくり」と「暮らしに身近な森林づくり」を進めます。
基本方針2「県民全体で森林を支える社会づくり」では、
3つの対策「森を育む人づくり」「森と人をつなぐ学びの場づくり」「地域の身近な水や緑の環境づくり」を進めます。
川越町では小中学校自然教室事業、あいあいホール改修事業、児童館広場芝生化事業などで活用しています。

関連記事

カテゴリー