こんにちは森林の風事務局です。昔ながらの農業や林業によって育まれた里山は、人と生き物が共存する豊かな自然環境でした。しかし近年、開発の進行や農林業の衰退により放置されることで、自然の姿が失われつつあります。、菰野町でも多くの動植物が姿を消しつつあるのが現状です。(写真はコメダの森にあるミツマタ植樹地の実生)

自生しているヤマツツジ
コメダの森は、かつて住民の暮らしに欠かせない里山でした。しかし、コメダ珈琲と私たちが整備を始める以前は、十分な手入れがされておらず、暗くて居心地の良い森とは言えない状態でした。そんな中、地主様のご理解のもと、少しずつ森の環境を整えることができ、今では明るく気持ちの良い空間へと変わりつつあります。その中でも鳥井戸川に流れ込む「おおるりばし」周辺の支流の清掃には多くの時間と手間をかけました。その結果、空が広く開け、周囲にはスギ以外の高木がほとんど見られない、開放感あふれる明るい場所へと生まれ変わりました。



コメダ珈琲の社員が河川を掃除しています
コメダの森は東海自然歩道沿いに位置し、登山者や観光客にとって目立つ場所にあります。 菰野町の地域森林計画書に記載された森林整備の基本的な考え方(保健・レクリエーション機能)に沿い、憩いと学びの場を提供するため、多様な森林整備を推進しています。 その一環として、立地条件に応じた広葉樹の導入を進め、誰もが野外レクリエーションを楽しめる環境づくりを目指しています。


「おおるりばし」から見おろした景色
川辺に自生するサツキの植生を再現することで、自然の本来の姿を取り戻し、より魅力的な森の環境を創り上げる取り組みを計画をしています。川辺に自生するサツキは、里山整備の重要な一環として活用されています。その強靭な根が増水時にも耐え、河川沿いの土壌流出を防ぐため、川辺の生態系の保全に大きな役割を果たします。また、その自然の姿を活かした植生が、地域の環境再生や景観向上に寄与し、多様な生物の生息環境を支える基盤となっています。

まずは育てることから・・・コメダ珈琲の新入社員が世話をしています
サツキは庭木として広く知られていますが、自然の中では川岸の水しぶきを浴びるような場所に自生します。かっ色の毛に覆われた枝は横に伸び、岩場にしっかりと根を張り、力強く生育します。その生育環境は、河川沿いの開けた明るい場所に限定され、周囲に高木がほとんど存在しません。また、岩の割れ目や大きな礫の間に根を張りながら生息しており、頻繁な洪水によって他の樹木や草本が定着できない厳しい環境に適応しています。言わば、サツキは生存競争を避け、他の木々が根付けない渓流沿いの岩場で、健気に生き抜いてきた植物です。時には激流に飲まれながらも、その環境に耐え抜く力を身につけ、たくましく成長してきました。 このような特性が、サツキを独特の生命力を持つ植物として際立たせています。

増水時に水没することがありますが、根が水に強いため枯れることなく生き延びることができます
サツキは、岩肌や渓流のそばなどの厳しい環境でも力強く育つことから、「節約」「節制」「貞淑」といった花言葉が付けられています。また、「幸福」や「支え合う」という意味の花言葉は、渓流の流れに耐えながら、岩や地面にしっかりと根を張って生きる姿に由来するとされています。このように、サツキの花言葉には前向きで温かみのあるものが多く、そのたくましさや生命力は、人々に希望を与えてくれる存在といえるでしょう。

サツキの別名は岩躑躅
サツキは、万葉集では「岩つつじ」として登場します。ツツジ科の植物の中でも岩場に適応し、厳しい環境で力強く育つことから、この名が付けられました。和泉式部の有名な歌には、「岩つづじ 折り持てぞ見る 背子が着し くれなゐ染の 衣に似たれば」とあり、愛しい人が身にまとっていた紅色の衣と、手折った岩つつじの鮮やかな赤い花が重ね合わせて表現されています。この歌は、愛する人への思いと美しい風景を印象的に描いています。

コメダの森のシャクナゲ・・今年も咲いてくれました (シャクナゲもサツキと同じツツジ科ツツジ属の常緑低木です)
サツキは庭木として楽しむだけでなく、自然環境の保護や文化的な価値も持つ魅力的な植物です。