自然再生をビジネスに活かすby means ofネイチャーポジティブ

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こんにちは森林の風事務局です。先日、当団体の知識豊富な会員さんとお話をする機会がありました。その際、「これからの活動には『ネイチャーポジティブ』の考え方を取り入れることが必要になるのではないか」との見解をいただきました。ただ、正直なところ「ネイチャーポジティブ」という言葉は耳にしたことがあるものの、私自身その中身について十分理解しておらず、深く考えずに聞き流してしまいました。他の会員の方々も同様に理解が追いついていない様子でした。そこで今回、この「ネイチャーポジティブ」について、できるだけ小学生でも分かるくらい簡単な言葉でまとめ、会員の皆さん向けの備忘録として、ブログでご紹介しようと考えています。もちろん、一般向けの内容にも役立つと思います。

ネイチャーポジティブについて
「ネイチャーポジティブ」は簡単に言うと、「地球の自然が悪い方向へ進むのを止めて、2030年までに、元気が回復するように良い方向へひっくり返すこと」 を目指すものです。例えば、病気で元気がない人が、ただ病気が悪くなるのを止めるだけでなく、もっと元気になるように体力を回復させて、病気にかかりにくい丈夫な体にするようなイメージです。

どうしてネイチャーポジティブが必要なのか
地球の自然は、いま、たくさんの生き物が減ってしまったり、森や海が汚れたり、壊れてしまったりしています。このままでは、私たち人間も困ってしまいます。だから、これ以上自然を壊さないようにして、さらに元の元気な状態に戻していく必要があるのです。

ネイチャーポジティブにするための3つの大きな柱

1. みんなの土地で自然を守る(OECM)
これまで「国立公園」のように、特別な場所だけが自然を守る場所だと思われがちでした。でも、野生の生き物たちは、特別な場所だけでなく、私たちの家の近くの森や川、工場の敷地内の緑地など、いろんな場所に住んでいます。そこで、特別な保護区ではないけれど、生き物にとって大切な場所を守っていこうという考え方が「OECM(保護地域以外で生物多様性の保全に資する地域)」です。例えば、昔から人が手入れをしてきた「里山」のような森も、これにあたります。

日本の国土の約67%は森林で、そのうち約40%が人が植えた「人工林」です。この人工林でも、例えば木を切るときに、動物たちが住みやすいように太い木やいろんな種類の木を少し残したり、切りすぎないようにしたりすることで、自然を豊かにすることができます。これを「保持林業」と言います。保持林業の実践は、単なる環境保全にとどまらず、エコツーリズムや持続可能な木材生産などのビジネスチャンスにもつながっています。
※エコツーリズムとは、自然や文化を保護しながら、それを体験し楽しむ持続可能な観光のことです。

2. 自然の力で問題を解決(NBS:自然に根ざした解決策)
これは、洪水や暑さ、地球温暖化など、いろんな社会の問題を解決するために、自然の力や仕組みを利用しようという考え方です

低木を活用した土砂災害防止 低木を植栽することで、根が地面をしっかりと押さえ、土壌流出や地滑りを防ぐ役割を果たします。こうした取り組みが地域の生態系を守るだけでなく、エコツーリズムの促進や地域経済への波及効果も生まれています。
湿地を使った洪水対策  自然の湿地は、水を吸収して一時的に保管する能力があります。例えば、河川沿いに湿地を再生すると、大雨のときに水を吸収して洪水のリスクを軽減できます。
都市の暑さ対策としてのグリーンインフラ  街中に緑地を増やしたり、壁や屋根を植物で覆った「緑のカーテン」を作ることで、気温を下げる効果があります。また、木陰は地面の温度を直接下げる効果もあり、ヒートアイランド現象を緩和します。
ハイドロポニックによる農業と水質改善  川の近くで水耕栽培を利用することで、流入する汚染物質の吸収や、水質改善につながることがあります。※ハイドロポニック(Hydroponics)→水耕栽培

3. 企業やお金の力
これまでは、企業がお金儲けをすると、自然を壊してしまうことがある、と思われていました。でも、これからは、企業も「自然を大切にすること」を考えながら、お金を稼いだり、新しいものを作ったり、サービスを提供したりすることが求められています。具体的には、企業が「私たちは自然のためにこんなことをしていますよ」という情報をきちんとみんなに伝えるルールであるTNFDもできています。
※TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、企業が事業活動と自然との関わり(依存や影響、リスク、機会)を評価し、財務情報として開示することを求める国際的な枠組みです

例えば、建設会社も、ただ建物を建てるだけでなく、工事のあとに森を作ったり、その場所にもともといた生き物を守ったりすることで、自然をより良くしていく取り組みを始めています。地域の珍しい植物を移植したり、多様な種類の木を植えたり、地元の人たちと一緒に森を育てる活動をしていくのです。

自然再生をビジネスに活かすネイチャーポジティブ
「ネイチャーポジティブ」とは、自然を保護するだけでなく積極的に回復させることで、持続可能な未来を目指す考え方です。このアプローチでは、森林、特に人工林が重要な役割を果たします。適切に管理された人工林は、生物多様性の保全に貢献し、さらにビジネスとしても活用可能です。例えば、エコツーリズムの推進や持続可能な木材生産がその一例です。この考え方は、「30by30」という国際目標とも関連しています。「30by30」は2020年を基準に、2030年までに自然の損失を止め、自然を回復させることを目指しており、私たちの行動が未来を変える鍵となるのです。
「30by30(サーティバイサーティ)」陸と海のそれぞれ少なくとも30%を、保護地域や「OECM」と呼ばれる地域で保全しようというものです

森林サービス産業
 これは、森林を訪れて楽しむ活動(森林の訪問体感利用)を事業化するものです。例えば、花木が豊富な森、フォレストアドベンチャーのような冒険型パーク、キャンプ場、トレイルランニング大会などが含まれます。菰野町は積極的に取り組んでいると思います。

老齢林の機能を人工林に取り入れる
老齢林とは、長い時間をかけて自然に成長し、複雑な構造(大きな木、枯れた木、倒木など)を持つ天然林のことです。これらは多くの生き物のすみかとなり、炭素を大量に蓄えるなど、非常に高い生態系機能を持っています。
人工林では、木を伐採する時期を遅らせる(伐期の延長)ことや、針葉樹だけでなく広葉樹(花の咲く低木など)を混ぜて植えることで、老齢林に近い複雑な構造を作り出し、生物多様性を高めることができます。

ネイチャーポジティブがもたらす企業へのメリット

  • 企業価値の向上: 環境への取り組みを通じてブランドイメージが向上し、顧客や投資家からの信頼を得られる。
  • 投資の誘致: ESG投資の促進や資金調達機会の増加など、企業としての魅力を高める。
  • 事業リスクの低減: 自然資本を活用しながら気候変動や原材料不足リスクへの対応力を強化。

ネイチャーポジティブを推進する企業
ネイチャーポジティブを推進している企業として、サントリーの取り組みは特に注目されています。「天然水の森」の活動を通じて、森林の保護と水源涵養を進め、失われた生物多様性を回復させる「ネイチャーポジティブ」を積極的に実践しています(サントリー天然水の森)ほかにも、当団体と同じ菰野町にある大和ハウス工業株式会社は、生物多様性保全を経営戦略に組み込み、環境配慮型の事業を展開しています。(地域の方と行う生物多様性保全活動|環境配慮型商品/事例|環境への取り組み|サステナビリティ|大和ハウス工業)これらの企業は自然環境を保護しながら、社会やビジネスへのプラスの影響を創出しています。

ネイチャーポジティブの主な課題

  1. コスト負担: 生物多様性回復や自然再生を進めるためには、初期投資が大きくなる場合があります。そのため、費用対効果を明確にする必要があります。
  2. 定量化の難しさ: 自然環境や生物多様性の回復を測定する具体的な指標を設定することが困難で、評価方法が曖昧になりがちです。
  3. グリーンウォッシングの懸念: 環境への取り組みが表面的なものに留まることがあり、実際の効果が薄れる可能性があります。
  4. サプライチェーン全体への影響: ビジネス活動全体で持続可能性を追求するためには、供給網のすべての段階での対応が求められますが、それを実現するのは容易ではありません。
  5. 絶滅危惧種の回復: 既に深刻な状況に陥っている生物については、負荷削減だけでは対応しきれない場合があります。

ネイチャーポジティブを実現するには、国や自治体、企業、森で働く人、みんなで協力して行動することがとても大切です。「企業の森」プロジェクトにおける活動では、企業の利益を尊重しながらも、当団体の基本方針を軸とした取り組みを維持することが重要です。その中で、可能な範囲で「ネイチャーポジティブ」の考え方を取り入れることで、持続可能な環境保全とビジネスの調和を図ることができるかと思います。このような積極的な姿勢を持つことで、社会的責任と環境への貢献を両立させ、活動の影響力をさらに強化することが可能かと思います。

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