中小企業 make a contribution to 地域の森林

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こんにちは森林の風事務局です。当団体は三重県の「企業の森」という企画を通して企業の依頼を受けて森林整備を行っています。「企業の森」に参加されている企業のほどんとがいわゆる大企業と言われるところが多いです。参加されている大企業の気候変動への姿勢は事業環境の重要な要素として捉え、脱炭素化を経営戦略の一環としてカーボンマネジメントを推進しています。※カーボンマネジメントとは、温室効果ガスの排出状況を把握し、抑制・削減に向けた取り組みを継続的に実施することです。

大企業がカーボンマネジメントを推進する背景には機関投資家、社会からの脱炭素化の要請に応えなければ自社が選ばれなくなり資金調達が難しくなったりすることで、事業活動に支障が出るという危機感からです。これらは主に大企業を取り巻く状況ですが、中小企業はグローバルな事業展開を進める大企業とサプライチェーンで繋がっています。大企業は自らの事業活動の脱炭素化を図るとともに、企業自らサステナブル調達のルールを設け、サプライチェーン上の取引先に対してもルールに準じた対応をするよう要請し始めています。こうしたことから、大企業同様に中小企業も、脱炭素という潮流への対応が必要になります。

脱炭素化を取り組むには温室効果ガスの排出源の範囲を示す指標であるスコープがあり、3つに分類されます。
スコープ1:自社、直接の温室効果ガス排出量(燃料やガスの使用など)
スコープ2:自社、間接の温室効果ガス排出量(電力や熱の購入など)
スコープ3:自社、関連の温室効果ガス排出量(原材料や製品の調達、物流、廃棄物処理など)
脱炭素化を進めるには、スコープ1と2だけでなく、スコープ3も含めた全体的な排出量を把握し、削減方法を検討することが重要になります。特に、温暖化ガスの算定・報告に当たっては、企業の事業活動に関するスコープ 3の報告が重要視されるようになり、企業としての対応が不可欠の状況になっているようです。また、スコープ3においては、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を算定し削減することが求められます。そのため、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を削減するためには、サプライチェーン全体でカーボンオフセット活動を行うことも必要になります。※カーボン・オフセットとは、企業活動などで削減しきれず排出したCO2を別の場所での吸収/排出削減量でオフセット(埋め合わせ)することです。

脱炭素化が騒がれる今日、大企業は、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにする「ネットゼロ」を目指しています。そして、その達成計画の一部として、カーボンオフセットが重要になってきているのです。カーボンオフセット活動はネットゼロを目指す過程で重要な役割を果たしますが、数値で明示される脱炭素化やエネルギー効率向上の代わりにはなりません。※ネットゼロとは、温室効果ガスあるいは二酸化炭素(CO2)の排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにするという意味です。

また、オフセットは見せかけに過ぎないという考え方もあります。実態のない検証もしてないプロジェクトでオフセットしたとしても、企業が排出量をごまかしている可能性があると思われるからです。つまりオフセットという手段が、企業のグリーンウォッシュに使われてしまうという危険があるということです。

冒頭で述べたように当団体に森林整備の依頼をされているほとんどは大企業ですが、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を削減するためには、企業の規模に関係なくサプライチェーン全体で挑まなくてなならない状況です。中小企業だから取り組まなくても良いということではないです。現在、サプライチェーン上の中小企業も取引先の要請や問合せなどが発端で国際イニシアチブ(SBT CDP RE100 再エネ100宣言RE Action等)へ参画の準備をしているところが多いようです。

現況からみても中小企業はスコープ1,2だけを完遂しているだけでは不十分でサプライチェーン上であって何かしら社会や取引先にアピールできる環境貢献活動が必要になるかと思います。そういう意味でも大気中から炭素を取り除くことができる森林の自然の仕組みを利用する植林は、カーボンオフセットの手法として広く支持されています。また、グリーンウォッシュと捉えられないためにも実効性のある森林環境教育などの採択は有効だと思います。※SBTが定める中小企業版SBTの条件に当てはまる場合、スコープ1と2だけの算定で中小企業版SBTの認証取得が可能です。

中小企業の森林整備の取り組みの参画は自社の知名度・認知度の向上のPR活動には最適な方法だと思います。そして何より中小企業の森林整備への取り組みは数が少ないので目立ちます。何も「企業の森」の活用だけでなく、比較的低コストの植林とか社員やその家族を対象とした森林環境教育を施すことは実態のあるカーボンオフセットの活動であると思います。確かに森林クレジットのようなCO2削減量を明示することはできませんが、このような額に汗する実態のある脱炭素活動こそ社員のモチベーションの向上や社会の信頼を得て、企業活動の持続可能な向上をもたらすのではないでしょうか。

また、地元の金融機関が融資先の選定基準に地球温暖化対策への取組状況を加味し、脱炭素経営を進める企業への融資条件を優遇する取組も行われており、それらの審査印象もよくなるのではないでしょうか。中小企業の多くは地域密着型であると思われるので、その地域の豊かな自然を守り、後世へと繋ぐための環境貢献型活動をしていくことが中小企業にふさわしい脱炭素活動かと思います。

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